MALAVOI
1980年代半ばに始まったワールド・ミュージック・ムーブメントのさなか、カリブ海に浮かぶ小島、マルティニークの伝統音楽を、エレガントの極みともいえる流麗なサウンドで再現し注目を浴びたマラヴォワ。現在もマイペースに活動を続け、およそ現在30年余りのキャリアを持つ。
ポロ・ロジーヌ(p)、マノ・セゼール(vl) を中心にマラヴォワが結成された1970年頃、当初はヴァルス(ワルツ)やマズルカ、ポルカといったボールルーム音楽を専門にしていたという。しかしこの時期、ハイチ産のモダン・コンパの流行(隆盛に乗ってコンパの大手レーベル、ミニ・レコードが旗揚げしたのが71年)ということもあって、マノ・セゼールはグループを退き、70年代半ばにマラヴォワのサウンドは一転する。ビギンなどでは現在の基本は出来上がってはいるが、ジャズやラテン、カダンスなどをレパートリーに入れ、黒く野性味を帯びたダンス音楽を特徴としていた。もともと、ピエール・パステル、モーリス・マリー・ルイス、レイモンド・マザラン、ピエール・ジャベール、ジュリアン・コンスタンスらが持ち回りでボーカルを担当していたが、モーリス・マリー・ルイスとラファエル・ランボーがその後のメインボーカル、まもなくこの二人にラルフ・タマールが加わることとなる。ホーン・アンサンブルにバイオリンは1本、しばらく後にソロのため脱退するパーカッションのデデ・サン=プリもこの頃のメンバーだ。(下のディスク1,2)
リリースしたアルバムは商業的に失敗し、マラヴォワは2年ほど活動を休止するが、80年代に入るとマルティニーク産のビギンをコンセプトの中心に置き替え、マノ・セゼールがカムバックし活動を再開する。ボーカルはラルフ・タマールの一人に、ホーンは消え、ビギン・バンドの伝統でもあるチェロを入れ、バイオリン・セクションを4本にする。現在のようなマラヴォワのスタイルがここで確立する。
この新生マラヴォワがProduction 3Aから81年にリリースしたアルバム「MALAVOI」は「LA BELLE EPOQUE」というタイトルで、イビスクス・レコードよって既にCD化されている。(下のディスク3)
82年から84年にかけてマラヴォワはG.D. Productionから3枚のアルバムをリリースする。いずれも「MALAVOI」というタイトルで、これらの録音は2枚のCDに編集されている。(下のディスク4,5)「La Filo」「Amelia」「Bona」といった曲が評判を呼び、ジャーナリストのマリジョゼ・アリを歌手に迎えた「Caresse-Moin」の大ヒットを生み出す。また、ユーザン・パルシー監督による映画「マルチニークの少年」の音楽を担当したのもこの頃である。
タイトなリズムと電化された先鋭的なサウンドを武器に「ズーク」という新しい音楽がいよいよ爆発し、マルティニーク〜グアドループの音楽が、世界的に知られるようになり、対極的なアナログ・サウンドを追求していたマラヴォワの知名度も一気に上昇する。86年の「LA CASE A LUCIE」や、フランス本国で録音された87年のライブアルバム「AU ZENITH」など、円熟に達したこの時代の演奏が、彼らの究極的な魅力といってよいだろう。尚、国(島?)民的歌手エディット・ルフェールは、このライブアルバムでのコーラス参加が、人気の足がかりだったといえる。(下のディスク6,7)
日本でも彼らが知られるようになってきたのはこの時期だが、しかしここでラルフ・タマールがソロ転向のため、グループを離れることになる。代わってボーカルに就いたのがピポ・ジェルトルード。メジャーレーベルからの配給により「JOU OUVE」(88)、「SOUCH'」(89)をリリース。エレガントさを増した反面、ソフィスティケートし過ぎたという、賛否両論の声も。バイオリンの一人がフィリップ・ポーリーに代わり、パトリック・アートウィックへ。現在ソロ歌手として人気のトニー・シャスールが参加するのもこの時期、89年には来日を果たすことになる。(下のディスク8,9)
92年、エディット・ルフェール、タニヤ・サン=ヴァル、フィリップ・ラヴィル、マルセ、フランシスコ、ジョセリーヌ・ベロアール、ラルフ・タマール、ベートヴァ・オバ、カリ、サム・アルファといった、シャンソン・クレオール〜マルティニーク伝統尊重派の豪華なゲストを迎えたアルバム「MATEBIS」を制作する。コーラスにスージー・トルボー、ジャン=リュック・ヴァネルといった、人気ズーク・バンド、クワックの歌手たちも参加。また、それに伴ったツアーも行われ、その模様を収録したライブCD、ビデオもリリースされた。ピポとラルフ・タマールの新旧歌手によるヒット曲「Sidonie」はなんとも感慨深いシーンである。ダニエル・ダトとジャン=リュック・ピノがバイオリン・セクション新メンバーに。
このツアー中、リーダーであるピアニストのポロ・ロジーヌの死という、大きな衝撃がマラヴォワを襲うことになる。サウンドの核を失った彼らは「代役として務められるのはこの人間しかいない」というべきピアニスト、マリオ・カノンジュのサポートを得て、ツアーを敢行した。(下のディスク11,12)
実質的なまとめ役は、バイオリンのジャン=ポール・ソイームとなり、94年のアルバム「AN MANIMAN」96年の「SHE SHE」でのほとんどの曲作りに関わっていくことになる。(下のディスク13,14)チェロの姿がなくなったのはこのあたりから。また、バイオリン・セクションは、マノ・セゼールが実務から離れ、細かな異動がみられるようになるが、メンバーの変更というよりも、身体の空いた人間のフレキシブルな対応といったところなのだろう。ドラムも古くからのデニス・ダンタンに加え、時折ロマイン・パルーが担当するようにもなった。新しい歌手としてヴァレリー・オディナも参入。
98年彼らは再び、エディット・ルフェール、マリジョゼ・アリ、ジャン=フィリップ・マルテリー、デデ・サン=プリ、ハイチのアラン・カヴェ他、豪華なゲストを迎えた作品「MARRONNAGE」を発表する。翌年99年にはラテンを交えながら、やや伝統回帰をみせた「FLECH KANN」を発表。(下のディスク15,16)この2枚のアルバムではジャン=ポール・ソイームのクレジットが無いが、マラヴォワの暖簾分けのようなグループ「マテビ」での活動も理由にあるに違いない。
優れた個性は新たなジャンルを生み出し、後の世代へと増殖して行くが、新世紀のマラヴォワもそんな一途をたどっていくのだろう。30数年といえど、アラゴンのようなキューバの老舗グループに比べれば、まだまだ青いものだ。
※このページのタイトル部分にある一番大きな写真は、1977-78リリースの2枚のアルバムの編集LP盤(DEBSより、たぶん84年発売)のジャケットからスキャンしたもの。ラルフ・タマールが加入し始めたころのものだが、もったいぶってないで早いとこCD化してもらいたいものだ。「若いなあ」と感心するよりも、変わっていないジャン=マルク・アルビシー(後方一番左)のほうに目が行く。

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1. Martinique
ホーンが際だつ初期のサウンド。バイオリンはクリスチャン・デュ・ネグリの一人だけ。
Celestin ・ Martinique ・ Zizi ・ Te Adora ・ Cé Normal ・ Diab'la ・ Bakoua |

2. Madjombé
上と同様。ボーカルはラファエル・ランボー&マリー・ルイスの二人。
Madjombé ・ Amiral Robe ・ La Pati La Pata ・ Michèle ・ En Bas Malavoi ・ Ca Malhéré ・ Lucumi ・ Vieja La Luna |
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3. La Belle Epoque
バイオリン主体のマラヴォワらしいサウンドが出来上がる。ボーカルはラルフ・タマール。
Roro Marott ・ Dépri Cô Ou ・ Le Vieux Couple ・ Ti Citron ・ Flé Bô Caille ・ Dialogue |

4. Malavoi
数々のヒットを生んだアルバム。マリジョゼ・アリの歌う「Caresse-Moin」が最大のヒット。
La Filo ・ Quadrille C ・ Conversation ・ Passillo Mat'nik ・ Amelia ・ Caresse-Moin ・ Cinelle Ô ・ Marinelle ・ Ababa |
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5. Malavoi
こちらもヒットしたアルバム。数々の古典を見事マラヴォワのスタイルに甦らせた。
Gram É Gram ・ Zouël ・ Quadrille M ・ Antoinise ・ Bavaroise ・ Malavoi ・ La Guadeloupeenne ・ Ti Colibri A ・ Moin Révé ・ Bona |

6. La Case À Lucie
アンサンブルの出来、楽曲、演奏力すべてにおいて完成されたアルバム。
Sidonie ・ Apre La Pli ・ Case A Lucie ・ Apartheid ・ Sport National ・ Gens Moin ・ Atlantik |
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7. Au Zenith
ゼニットで行われたライブ。ビデオもリリース。LP盤、CD、日本版CD、内容が少しづつ異なる。
Amelia ・ La Filo ・ Plere Chabin ・ Malavoi ・ Sport National ・ Apartheid ・ Carretero ・ Ababa ・ Bona |

8. Jou Ouvé
メジャーレーベル FLARENASCH(日本盤はCBS/Sony)からリリース。ボーカルはピポ・ジェルトルードに。
Jou Ouvé ・ Philomène ・ Cyclone ・ Démarrage ・ Belle De Nuit ・ Albè ・ Bossu À ・ Legend' ・ Bleu Alizée |
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9. Souch'
ソニア・ピネル=フェロールの参加でコーラス・ワークなどに力が入り、デジタル処理の度合いも多く、洗練度を増した。
Tout' Je Pa Je ・ Viktô ・ Nou Pa Sav ・ Retour D'Exil ・ Savan Ble A ・ Nuit Noire ・ Sirizya ・ Balata ・ Mesalyne |

10. Rétrospective
ベスト盤のようだが、*はボーカルをピポに置き換えてのリミックス。クレジット関係がめちゃくちゃ。
Ababa* ・ Case A Lucie ・ Tout' Je Pa Je ・ Caresse-Moin ・ Sidonie ・ Roro Marotte* ・ Savan Ble A ・ Viktô ・ Apre La Pli ・ Amelia ・ La Filo ・ Sport National ・ Bona ・ Cinelle Ô* ・ Jou Ouvé |
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11. Matebis
60年代に大舞踏団を率いた文化使節、ルールー・ボワラヴィルの曲をエディット・ルフェールが歌っている。
La Siren' ・ La Gwadeloupeen ・ Fort De France ・ Patshipa ・ Karolin ・ Concerto Pour La Fleur Et L'Oiseau ・ Exil ・ Nou Pa Moun ・ Lantou La Le ・ Me Ki Sa Ou Le ・ Je Suis En Paix Avec Le Monde ・ Mama |

12. Matebis En Concert
上のアルバムのドラマティックなライブの模様。ラルフ・タマールとマリオ・カノンジュの息の合ったコンビネーション、フランシスコの粋なパフォーマンスが印象的。
Nou Pa Moun ・ Exil ・ Mama ・ Fort De France ・ La Siren' ・ Laisse Pale ・ Nosotros ・ La Vi A Bel ・ Me Ki Sa Ou Le ・ Racines ・ Moin Révé |
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13. An Maniman
リーダーの死によってマラヴォワもこれまで、と思いきやファンを安心させた1枚。タンブー(太鼓)の使用が普段より多い。
Kolédé ・ Mwen Menm Bout ・ Titin Bel ・ Tant An ・ Ti Shal Grobouyon ・ Es Sa Vré ・ Bwa Koré ・ Nathalie ・ Eritaj ・ Béni Wi Wi ・ Klasic Mazouk |

14. Shè Shé
メイン・ボーカリストであるはずのピポが参加していない。ヴァレリー・オディナがメンバーに加わる。マラヴォワらしい元気なビギン#5でのバイオリン・ソロはマノ・セゼール。
Mizi Matinik ・ Shè Shè ・ Sa Ou Lé Mwen Lé ・ Konsa ・ Anasthasie ・ Bèt A Fé ・ Pati Pati'w ・ Ti Djo' ・ Alé Viré ・ Kasé Kô ・ Révé ・ Pani |
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15. Marronnage
デデ・サン=プリが彼の代表曲を聞かせる。#10や#14も懐かしい。このころからサルサっぽい曲をよく扱うようになる。
Syracuse ・ Chanson D'amour ・ La Péson O ・ Si Ou Té Lè ・ Tomaline ・ Zou ・ Si Ou Pati ・ Simin Pou Récorté ・ Mesi Bon Dié ・ Gram É Gram ・ Panié Si Mon Têt ・ Sonao ・ Ti Tan La ・ Le Vieux Couple |

16. Flèch Kann
久しぶりにレジェンヌやクアドリーユを扱っている。スティック・ファイティングの古い写真が印象的なジャケ写。
Lavi Afrikiltè-ya ・ Tototo ・ La Wonn ・ Rigré ・ Flèch Kann ・ Quadrille P. ・ Vuelve ・ Calenda Des Étoiles ・ Sonjé |
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17. Líve à Club Med World
パリのエンタメスポットでのライヴ。ジャケットにマノ・セゼールが写っているのが嬉しいけど、メンバーのクレジットぐらいは入れておいてほしい。懐かしいダンソン、新しいクアドリーユ。
Qadrille P ・ Case a Lucie ・ Doudou ・ Rigré ・ Almendra ・ Asi Paré ・ Padon Mon Dié ・ La Vi Agrikité-ya ・ Sonjé ・ La Filo ・ Tintinbel (An Maniman) |

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ROSIER AUDIBERT |
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PALAVIRE |
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FAL FRETT' |
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同様にベルナール兄弟らによる、ソフト・ズーク路線のグループ
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MATEBIS |
ジャン=ポール・ソイームによるバンド。マラヴォワ以上にマラヴォワ
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